文徴明とその時代展

文徴明は明代の書家であり画家である。
その真筆が観られるということで、東京国立博物館に行ってみた。
しかし、去年の顔真卿展のように看板が出ていない。
もしかして、会期を間違えたかとポスターを探す。
東京国立博物館は門外にミュージアムショップがあり、そこでポスターを見つけると、どうやら企画展ではなく東洋館の常設展の一部に展示があるようなので、通常の入場券を購入して入場する。
本館では、高御座の展示があるようで、行列が出来ている。
正門を入って右手が東洋館である。
本館が荘厳な建物であるのに対して、東洋館はちょっとモダンな雰囲気があると思っている。
どうやら「人・神・自然」というテーマの展示もあるようだ。
入って直ぐにあったのは、中国の石仏の数々である。
正直なところあまり興味はないが、実物を見るとなかなか面白い。
ぶらぶらと観てるうちに、ちょっと欲しくなってくる。
階段を上ると 「人・神・自然」というテーマで、彫刻、装飾品、器や木乃伊まで展示されている。
古代ギリシャ、古代ローマ、エジプト、ペルシャ、メソポタミア、スキタイ、バクトリア、中国、マヤ、オルメカ、シカンと、古代世界の文物がテーマ別に並べられている。
普段はお目にかかれないものばかりで、ちょっと面白い。
更に上がっていくと、今度は中国の青磁や天目茶碗など、陶磁器類が並ぶ。
改めて思ったのだが、椀、皿、壺、陶磁器類を観るのは、案外、楽しい。
その上が、いよいよ文徴明の展示である。
ちょっと勘違いしていたのは、文徴明が多数を占めていると思いこんでいた。
実際は、文徴明の生きた明代の蘇州の他の書家や画家も多く展示されている。
文徴明の真筆だけでなく、董其昌の軸、祝允明の巻なども観れる。
そして、画家としての文徴明の作品もある。
ぐるりと一回りし、上がっていくと、中国の漆器である。
特に元代の漆器の色、形のモダンさに驚いた。
そして、朝鮮のコーナーがあり、高麗青磁の水滴や軸など、これまた珍しいものが観れた。
最上階まで観たので、1階に戻り、地下に行くと、今度はクメールの仏像である。
中国の石仏とは、また違った趣きがある。
そして、ベトナムやタイの陶磁器、トルコの絨毯、インドの細密画など、アジア全域の珍しいものが観れた。
でも、書が観足りないので、そのまま書道博物館へと向かう。
東京国立博物館を出て、裏に歩いていく。
坂を降りて、山手線を越えると、根岸である。
南口に出るので、駅前を抜けていくと、書道博物館である。
今回の展覧会は連携企画なので、国立博物館の半券を持っていると、独りでも団体料金で入れる。
同じ企画だがこちらは、書画コレクターとしての面や日本への影響といった視点での展示も面白い。
そして、元代の書家、趙孟頫の真筆が観れた。
また、企画独自のキャラクターを設定し、解説が充実していると思った。
子供でも分かるように、工夫をしているのだろう。

こうしてみると、大きな幅は少ないものの、多くの真筆が観れる企画展であった。
そして、国立博物館は常設展の中、アジアの諸文化の中の書画、そのさらに代表例としての文徴明という、謂わば広く浅く捉えているのに対して、 書道博物館は文徴明の影響力を紹介する、深く掘り下げていくといった違いがあると思った。
そして、やはり真筆を観ることはとても刺激になる。
文章全てを読めるほどの教養はないが、起筆から終筆までの細かな筆使いを辿っていくだけでも、とても勉強になる。
そして、500年前の墨の色がとても美しい。
以前に比べると図録の質も向上しているのだけれど、やはり真筆の墨の色というものは違うものだと思う。
どちらの展示も面白く、見ごたえがある企画だと思った。

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