墨を磨る

作品を書くのには、墨汁より磨った墨の方が良い。
墨の伸びも違うし、渇筆の線の美しさが違う。
とは言え、なかなか墨を磨るのは時間がかかる。
いちどきに磨ろうとすると、途中で気が散ってくる。
何かをしながら磨ったこともあるが、手元が狂って墨が飛び散って、掃除が大変だったこともある。
そこで、平日の夜、帰宅後に30分でも1時間でも、墨を磨る時間を作ることにした。
会社員としての生活を続けながらなので、毎日、確実というわけではないが、週に3日ぐらいはいけそうだ。
ただ墨をするだけの時間。
あまりに落ち着かないときは、ちょっと雑誌をめくったりもするが、そのうち墨を磨る事に気をとられている。
硯の上を墨が滑る音だけが聞こえる。
墨の香りが、部屋に漂っている。
いつまで続くかわからないが、ちょっとした贅沢な時間の使い方かもしれない、と思っている。

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