迷い

冬の書海社展に向けて、作品の下書きを始めた。
例年より、2週間ぐらい遅れているが、今年は2尺×8尺で行こうと思うので何とかなるだろう。
だが、書き始めてみると、ちょっと困ったことになった。
作品の出来上がりのイメージがつかない。
下書きは、字を調べながら、小さな紙から徐々に大きくしていき、字配りのイメージを固めていく。
その書いていく過程の中で、出来上がりに向けて着想を得る。
何年も書いているので、大体の紙面に収まるイメージは出来ている。
だが、草書で書き連ねる中での、流れというか、リズムのようなものが見えてこない。
これではただ字を並べただけなのだ。
出来上がるためには、並んでいることの必然や逆説があるべきだ。
それは、単語と文脈の関係にも似ている。
ということは、まだ自分が何を書こうとしているのかを、理解していないということだ。
作品に対する迷いのようなものなのかもしれない。
だが、迷っていないことなんて、今まであっただろうかとも考える。
初めからイメージの出来ていたことなんて、ほとんど無いだろう。
実際に書いていくうちに、流れが見えてくる。
流れるように筆を進めたり、逆に流れようとするのを堪えてみたり、広がったり縮んだりする。
音楽で言うところのリズムやビートとは、少し異なるがそこにはリズムのようなものがある。
個々の文字の形は自由なのだが、連なることで形が決まってくる。
それは直前の文字だけではなく、前後左右、そして、同じ文字や、同じ偏、同じ旁の登場回数も関係する。
つまるところ、紙面の中での線と形の調和であろう。
言葉で考えると難しいのだが、ひたすらに書いていくうちにその調和が掴める時がある。
書とはそういうものではないだろうか。


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