筆を洗う

稽古から帰った後、作品を書いた後、練習した後、筆は必ず洗う。
子供の頃はそれが出来なくて、カピカピになった筆を、教場で力任せにほぐしたりしていた。
さすがに大人なので、必ず洗うようにしている。
墨に膠が含まれているので、乾燥すると固まってしまう。
膠だったらお湯で溶かせば良いような気がするが、筆そのものを束ねているところまで溶け出してしまうので、逆に筆を痛めることになる。
だから、冬だろうと夏だろうと、水で筆を墨を洗い流す。
穂先の毛の間に入り込んだ墨は、水を流し続けながら、指の腹でほぐして墨を流す。
流れる水に墨が混じらなくなるまで洗う。
こうして水に晒して墨を落とした毛先は、乾くとふわふわの状態に戻り、墨をよく吸う。
ふと思ったのだが、動物の毛とはいえ、筆も毛であろう。
セーターの洗濯には柔軟剤、髪の毛はリンスを施して、毛の状態を保っているが、筆にはその必要は無いのだろうか?
もしかするともっと纏まりやすかったり、柔らかくなったりするのではないだろうか。
そうは思うものの、数千円の逸品の筆に、そんなことをしてみる気にはならない。
安い筆で試してみようかとも思うのだが、使い勝手の違いは、普段使っているものでなければ、解らないだろう。
そんな下らないことを思いながら、今日も筆を洗う。

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