東京国立博物館・総合文化展(「没後700年 趙孟頫とその時代―復古と伝承―」特集)

年初に東京国立博物館と書道博物館が連携して、書道関連の企画が行われている。
今年は趙孟頫であることは、秋ぐらいに予告で知った。
ここ2年程、毎月の臨書課題に趙孟頫の「前後赤壁賦」を選んでいることもあり、真筆を見ておきたいと思っていた。
また、博物館、美術館の入場に、事前予約制が導入されているらしいことも、予告を調べる中で知っていたのだが、実際に予約するとなると、訪問する日を決めなければいけないので、少し億劫になる。
それで、いつに行こうか決めかねていたのだけれど、ふと正月であれば意外といけるのではないかと思い立ったのが12月31日の夜。
東京国立博物館のホームページで会期と予約方法を調べて、Paypalで支払いを済ませると、指定したメールアドレスに、QRコードの記載されたeチケットが届いた。
紙のチケットが無いのはちょっと味気ないけれど、これはこれで便利である。

 1月2日は朝は曇っていたものの、午後には冬晴れの寒い日となった。
既に街には人が戻って、混雑とまではいかないけれど、7人掛けの電車のシートが全て埋まるぐらいではある。
上野公園の中にあるスターバックスは満席、動物園も予約制のためか行列ができている。
東京国立博物館もそこそこ人が集まっている。
早めに着いたので、入場できるまで少し並んだ。
入口で受付の方が、eチケットのQRコードを、スマホで読み取る。
印刷した紙を持参している方もいたけれど、PCのメールアドレスを指定した方だろうか。
入場してとりあえず本館に向かう。
本館には大きな垂れ幕が下がっていた。
重厚な本館の1Fで会場を探すが、どうも見当たらない。
会場案内もデジタルサイネージが、中心になっている。
そういえば、本館は日本文化が中心で、諸外国の文化は東洋館、特別展の場合は平成館であることが多い。
改めて東洋館へと向かう。
東洋館はアジア各国の文物、石像等が各階に陳列されている。
趙孟頫の展示は4Fの中国の書画コーナーの特集として開催されている。
が、B1Fでイスラーム文化の特集だったので、先に立ち寄る。
マレーシアのイスラーム美術館の協力による「イスラーム王朝とムスリムの世界」という企画で、各国、各王朝の絵画、彫刻、陶器、衣類、文房具、クルアーン、装飾品、と幅広い領域を手際よく展示してあり、煌びやかな装飾品、細かく描き込まれた細密画、陶器の色使いなどとても面白かった。
B1Fには、カンボジアのクメール彫刻も展示されている。
こちらもいつも観て感心する。
エレベーターで4Fに上がろうとすると、3Fまたは5Fにしか止まらない。
互い違いにフロアが設置されていて、奇数階の側のエレベータに乗ったようだ。
3Fから歩くと、中国の陶磁器の展示が目に留まる。
あちこち寄り道をしつつ、ようやく「没後700年 趙孟頫とその時代―復古と伝承―」特集に辿り着いた。
 
元はモンゴル系の王朝で、前の宋(北宋・南宋)、後の明と比べて、あまり評価されていないように思う。
趙孟頫についても、南宋の出自でありながら元に仕えたと見做されて評価が低いと聞く。
どうやら書道史の背景、書家の評価の裏側に、中華思想的な文脈が透けて見えるのだけれど、趙孟頫の書は、むしろ宋より以前の東晋や唐の様式に近いように思う。
法帖で観る趙孟頫は、線が美しいと思っていたので、今回の展示では、「楷書玄妙観重脩三門記巻」の真筆が見れたのが良かった。
自分の書ける楷書とは様式が異なるけれど、このような線の書も憧れる。
趙孟頫は他にも冊や軸など数点ある。
それに加えて、元代の他の書家の作品や僧侶の偈、水墨画なども展示されている。
二玄社の法帖集には無いが、故宮法書全集でしか観たことが無かった、鮮于枢、康里ドウドウ(説明できない難しい字)の真筆が見れたのも良かった。
主流の書家の作品は、どこかしらで目にしているが、どちらかというと主流ではない書家の真筆が観れたのはありがたい。
 
ちょっと気分を変えて、本館や平成館の他の展示もぶらぶらと観て回った。
もしかすると、この遮光器土偶の実物を見たのは初めてかもしれない。

ぶらぶらと敷地内を歩いていたら、寛永寺の根本中堂の特別参拝ができることを知った。
「博物館に初もうで」というイベントらしい。
敷地から出るときに、この再入場券を貰い、参拝時に見せると散華が貰えて、再入場時にはこれを見せれば良いらしい。
西門から出て3分ほどだろうか、根本中堂が見えた。
土足厳禁で靴を脱いで上がり、中は撮影禁止だったが、江戸時代の由緒ある仏像や鰐口が見れた。
お焼香を上げ、お神籤を引いて、そそくさと参拝を済ませた。
 
そして再び国立博物館へ戻り、再度、趙孟頫、鮮于枢、康里ドウドウの真筆を堪能し、かれこれ4時間近く博物館の中を歩いていた。
あと、この連動企画は図録が豪華なのもありがたい。
作品はフルカラーで収録されているし、テーマに沿った解説も読み応えがある。
書道博物館は1月4日からなので、日を改めて拝観する予定である。


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