空地の人


街の中の空地。
大きなビルやマンションを建てる際に、容積率の優遇と引き換えに公開空地を設定する、らしい。
舗装された歩道と続いていながら、ちょっと歩道ではないような場所。
植栽があったり、敷き詰めているブロックの色が違っていたり、時にはオブジェがあったり、オブジェ風の何かがあったり。
そういう小洒落た空間の中に、オブジェのような、ベンチのようなものが存在している。
公園ではないけど、人が座れるようなものがあるところ。
そこになぜか人が座っている。
ホームレスということではなく、サラリーマンや作業員らしき人が、所々にぽつんぽつんと座って、スマホを眺めていたり、何をするということも無く過ごしているようだ。
きっちりと詰めているわけでもないけれど、何となく距離を置いて、あちらに一人、こちらに一人と座っている。
特に気にも留めていなかったが、ある日気がついた。
その日は、目的地に着いたのが、ちょっと早かった。
時間を潰すには、辺りをぶらぶらしてもいいが、そこまでの時間はない。
それに荷物を持って歩き回るのも、ちょっとしんどい。
それであれば、そのあたりのベンチにでも、腰掛けようと思ったら、ほとんど埋まっている。
そういうことか、と。
空地の人は、半端な時間を潰すために、座っていた人達だった。
いや、本人たちに聞いたわけではないから、断言はできないかもしれないが、そうなのだと確信している。

UnsplashTom Swinnenが撮影した写真 

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