特別展「古代メキシコ」マヤ、アステカ、テオティワカン

東京国立博物館の特別展「古代メキシコ」を観てきた。
メソアメリカ文明、特にマヤ文明は、昔から気になっていたので、その遺跡の一部が日本にいながらにして目に触れることができるのは、本当にありがたい。
今回の図録は表紙が3種類あって、テオティワカンの死のディスク、マヤの赤の女王、アステカの鷲の戦士だったが、やはりマヤの赤の女王にした。
発掘されたマスクを復元したものだ。
赤の女王に関しては発掘現場のビデオが流れていたり、赤い三角天井の空間に石棺をイメージした展示がされていた。
こちらは赤の女王の夫のパカル王の石像と言われている。
パカル王は、キニチ・ハナーブ・パカル、赤の女王は、イシュ・ツァクブ・アハウ、マヤ文明の中でも黄金期と言われるパレンケ王朝の頃である。
マヤ文明の特徴的な絵文字も興味深いが、人物造形の美しさも惹かれる。
写実的で肉体の質感が表現されているように思う。
パキスタンのガンダーラ、カンボジアのアンコール・ワットに比類すると思う。
様々な石板が今回展示されていて、特徴的な絵文字の実物が観れるのもうれしい。
こういった展覧会は会場で実物を目で見る体験が重要だと思っている。
理解を深めるために図録を買っているが、今回の図録も会場にはない解説が多くかなり読みごたえもある。
マヤ文明だけでなくテオティワカン文明、アステカ文明の展示も面白い。
アステカ文明はスペイン侵攻によって滅んでいるので、スペインの文書などの展示もある。

マヤ文明は独特の絵文字を用いて、石に文字を刻んでいる。
古代の中国でも石碑という形で、石に文字を刻んでいたことを考えると、なかなか興味深いことのように思う。
なぜ、石に文字を刻むのか、ということには、記録を永遠に残したい、という意図だけではなくて、石に刻んだ文字が発する力のようなものに仮託している意図が何かあるように思っている。
書の世界とは一見無縁のようではあるが、文字を操る者としての視線からも興味深い展覧会である。
会期は9月3日まで。

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