うで玉子の話

生まれも育ちも東京の東側で、江戸っ子と言われればそうなのだけれど、生まれた時は既に江戸ではないのだから、東京っ子と言うべきなのではないだろうか、と思うけれど、既に東京に住んでいないので、今となってはどうでも良い。
自分はともかく祖父母は江戸っ子だった可能性がある。
というのは、祖父の両方とも、どうやら明治の東京府で生まれたと聞いている。
それが3代続いた江戸っ子だったのかどうかは、今となっては分からないが、士農工商で言うと工か商なのだから、今ほど職業の自由の無い時代背景を考えると、江戸町民の可能性が高いと考えている。
そんな江戸っ子だと思われる祖父母が、落語で聞くようなべらんめえ調で話していたかというとそんな記憶は無い。
何となく覚えているのは、「ひ」と「し」の発音が曖昧だったことと、「茹でる」ことを「うでる」と発音していたことだ。
つまり「うで玉子」とは「ゆで玉子」のことで、恐らく江戸言葉なんじゃないかと思っていたのだけれど、どうやら関東の年配の方はそう話すらしい。
「ゆ」が「う」に置き換わるのは、「うだるような暑さ」とはつまり「茹るような暑さ」の謂いとしてまだ残っているようだが、「ゆで玉子」を「うで玉子」と言っているのを家の他で聞いたことが無い。
しかし、明治生まれの祖父母の年代の言葉であれば、もう廃れてしまった言葉なのかもしれない。
うで玉子は子供の頃からよく食べていたものの一つだと思う。
例えば、弁当がおにぎり2つとうで玉子という組み合わせは、よくあった。
アルミホイルに少量の塩が包まれていたのだけれど、あれは結構な手間では無かったろうか。
市販のうで玉子には少量の塩のパックが付いてくることもあったが、あれはどこで手に入るのだろうか。
少量の醤油、ソース、マヨネーズはスーパーで見かけるのだが、塩は見かけない。
それどころか味付けゆで玉子なるものが存在しているが、あれは特別な方法で作られていて、黄身にまで味が浸透する技術は企業秘密らしい。
つまり、どんなに濃い食塩水で茹でたところで、味付けゆで玉子にはならないということだ。
玉子をうでる際に塩や酢を入れると、破裂した際の白身を固めるのに良いらしい。
そういえば、親が作るうで玉子は、時々、破裂していたことを思い出す。
自分で作るうで玉子は、ほぼ破裂したことが無い。
水から玉子を沈めておくことと、火加減を中火以下、弱火以上にすることぐらいなのだが、そういったコツはどこで身につけたのだろうか。
親から聞いた記憶は無い、ということは、本の知識だろうか、それとも単に忘れているのだろうか。

UnsplashJohn Vidが撮影した写真   

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